■ 役員給与とは?
役員給与とは、取締役・代表取締役・監査役などの役員に支給する報酬・賞与・退職金などの総称です。
法人税法上、役員給与は一定の条件を満たさない限り、損金(経費)として計上することが認められていません。
■ 税務上、損金にできる役員給与の3類型
法人税法では、以下の3つのいずれかに該当する場合のみ、損金算入が可能です。
1. 定期同額給与
・毎月一定の金額を、一定の時期に支給する給与
・事業年度開始から3か月以内に株主総会や取締役会等で支給金額を決定する必要がある
・支給額の変更は、改定事由(役員改選、経営環境の急変等)に基づく必要がある
2. 事前確定届出給与
・支給時期と支給額をあらかじめ決めておき、税務署に「届出」を行った給与
・主に役員賞与などが対象となる
・株主総会等の決議日から1か月以内、または会計期間の開始日から4か月以内のいずれか早い日までに届出が必要
・届出が遅れると、たとえ実態が妥当でも損金不算入になるため注意が必要です
3. 業績連動給与
・売上や株価などの業績指標に連動して変動する報酬
・上場企業等の「一定の法人」のみが対象
・報酬委員会の設置や報酬基準の明確化など、厳しい要件あり
■ 損金不算入となる主なケース(NG例)
・月額給与を途中で増額した
・賞与支給を決定したが、届出書を提出しなかった
・業績連動給与と称しても、指標や算定方法の根拠が不明確な場合
・株式報酬制度において、付与時期・条件が不明確なケース
■ 株式報酬制度とは?
株式報酬制度とは、会社が役員または従業員に対し、自社の株式(または株式購入権)を報酬の一部として付与する制度です。
報酬の対象が株式になることで、役員等は企業の価値向上が自らの利益にも直結するようになり、経営と株主利益の一致が図られます。
■ 株式報酬制度の主な類型例
1. 特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)
・役員等に対し、職務執行の対価として一定の勤続勤務継続を条件に譲渡制限付株式を事前に交付し、勤続勤務条件等を達成することで譲渡制限が解除される
・シンプルで制度設計しやすく、上場・非上場企業ともに導入が進んでいる
2. パフォーマンスシェア(業績連動株式報酬)
・中長期の業績目標の達成度合いに応じて、株式を役員に交付される
・成果主義を徹底した制度で、業績指標達成に対するインセンティブをより高めることができ、中長期的な企業価値向上に強く連動する
3. ストックオプション(新株予約権)
・役員等に対し、職務執行の対価として付与(新株予約権発行時に金銭の払込みなし)
・税務上の税制適格要件を満たす税制適格ストックオプションと税制適格要件を満たさない税制非適格ストックオプションがあり、それぞれ被付与者(役員等)において課税が行われるタイミング及び課税が行われる際の所得区分が異なる
■ 株式報酬制度の導入メリット
メリット | 内容 |
中長期的インセンティブの強化 | 株価や業績と連動することで、経営の質と持続性が向上 |
株主との利害一致 | 企業価値の向上が報酬に直結するため、株主と利害を共有し、中長期な企業価値向上に向けて企業統治の健全性、透明性、公平性を確保することが期待できる |
優秀な人材の確保・定着 | 魅力的な報酬制度として、人材の自社へのつなぎ止めや外部からの新たな獲得等人材獲得競争力の向上 |
現金流出の抑制 | 現金報酬に比べてキャッシュアウトを抑えられる(特にスタートアップで有効) |
■ 導入時の留意点・課題
1. 税務・会計処理の複雑性:株式の付与タイミングや評価方法によって、法人・個人双方で課税の扱いが異なり、特に税務上の取り扱いは複雑なため、専門的な知識が必要となる
2. 総合的な制度設計:法務・会計・税務と様々な視点からの総合的な制度設計が必要となり各専門家との連携が必要となる
3. 株式価値の変動リスク:株価の下落などで報酬の実質価値が大きく変動する可能性がある
■ おわりに
適切な報酬制度の設計は、節税だけでなく、役員のモチベーション向上や企業価値の向上にもつながります。また、今後はガバナンス強化の観点からも株式報酬制度の導入が拡大すると見込まれ、企業の状況に応じて適切に導入・運用していくことが求められます。
BASE ONE税理士法人では、上記の役員給与税制以外にも法人税務に関するご相談を随時受け付けております。税務や会計でお悩みの場合にはお気軽にご相談ください。