【M&A実践 ガイド】第2回 その決断、間に合っていますか?

【第2回】その決断、間に合っていますか?

── M&Aの準備に必要なリアルな視点と後悔しないための準備

M&Aは、特別な会社の“特別な選択肢”ではない

「M&Aって、特別な会社だけがやることだと思ってた」

そんな風におっしゃる経営者は少なくありません。
でも、じっくり話を聞いていくと、そこには実に様々な想いが隠れています。

たとえば──

・従業員の将来を考えると、大手のグループに入った方が安定するかもしれない
・自分はもう引退してもいいけど、事業は誰かに引き継いで育ててほしい

こんな“もっともな理由”もあれば、

・モチベーションが続かない
・子どもにはもう苦労をかけたくない
・健康に不安が出てきた
・そろそろ家族との時間を大切にしたい

といった、“些細だけど切実な気持ち”もあります。

つまり、M&Aとはごく普通の経営者が抱える、ごく現実的な悩みから生まれる選択肢なのです。

M&Aを選んだ経営者たちの「本当のきっかけ」

以下は、実際の支援現場で私が聞いてきた、M&Aを選んだ理由の一部です。
理由は人それぞれ。きっかけも一つではなく、複数の要因が重なって決断に至るケースがほとんどです。
経営者の数だけ、決断の背景があります。

①経営者のライフステージと事業承継に関する理由

後継者不在の深刻化 親族や役員・社員に適任者がいないため、会社や事業の存続のために第三者に託す。
2 経営者の高齢化・健康不安 体力的な衰えや病気の発覚などにより、第一線での経営継続が困難になった。
3 引退後の生活資金の確保 売却益を、経営者自身の退職金や老後の安定した生活資金に充てる。
4 早期リタイアの実現 自身の人生設計に基づき、事業が好調なうちに会社を売却し、趣味やプライベートに時間を費やしたい。
5 親族への負担回避 創業者の強い想いから、あえて親族を後継者にせず、経営の重責から解放したい。
6 相続・事業承継税対策 M&Aによる株式の現金化によって、将来的な相続における自社株の評価や納税の問題を解消する。
7 経営へのモチベーション低下 長年の経営で疲弊し、経営への情熱が薄れたため、会社の発展を新たな経営者に委ねたい。

 ②事業の成長戦略・資本構成の最適化としてのM&A

事業拡大のためのリソース獲得 自社単独では難しい、資金力、人材、技術、ノウハウといったリソースを買い手企業から得る。
2 新規事業への早期参入 ゼロから事業を立ち上げるよりも早く、既に実績のある企業にグループインすることで、市場へ参入する。
3 市場シェアの拡大(スケールメリット) M&Aを通じて競合他社にグループインすることで、市場での地位を確立し、仕入れやコスト面での効率化を図る。
4 海外展開の足がかり グローバル企業にグループインすることで、現地での事業基盤や販路を短期間で獲得する。
5 ノンコア事業の切り離し(選択と集中) 収益性の低い事業や、本業と関連性の低い事業を売却し、得意分野に経営資源を集中させる。
6 経営危機・業績不振の打開 経営不振から自力での再建が困難な状況で、大手企業の傘下に入り、経営再建を図る。
7 連続起業家としての出口戦略 (イグジット) 事業を立ち上げて育て上げた後、売却益を得て、次の新しい事業を立ち上げるための資金とする。

③ 事業の外部環境・偶発性による意思決定

業界再編の波への対応 業界全体でM&Aが活発になり、競争力の維持や生き残りのために、自らも売却を検討する必要に迫られた。
2 IPO(新規株式公開)の代替策(イグジット) 株式公開(IPO)を目指していたが、時間やコスト、外部環境の変化から難しくなり、M&Aによる売却に切り替える。
3 メインバンク・取引先からの勧め  銀行などの金融機関から、後継者問題や事業成長の手段としてM&Aを勧められた。
4 優良な買い手からのオファー 予期せず、自社の事業価値を高く評価してくれる企業から買収の提案があった。
5 人材不足・採用難の解決 慢性的な人材不足や、特定の専門人材(技術者など)の採用が難しいため、それを持つ企業にグループインする。
6 災害・予期せぬ事態への対応 震災、パンデミック、取引先の倒産など、経営者の手に負えない外部環境の変化により事業継続が困難になった。

 

本当に大事なのは、「タイミング」だった

「M&Aを検討する理由は、人によって本当にさまざまです。
しかし、私が数多くの現場に立ち会ってきた中で、成功と後悔を分ける分岐点は、最終的には「タイミング」に集約されると感じています。

早く動いた人ほど、良いご縁を得ている
「まだ売るつもりはないけれど…」
そんなご相談から1~2年後、想像以上に良い条件でM&Aが成立したケースは少なくありません。

逆に、体調不良や業績悪化、従業員の退職など、“何かが起きてから”ようやく動き出す方は、
・相手に足元を見られてしまう
・希望の相手に断られる
・選択肢が狭まり、納得できない条件でも受けざるを得ない

といった状況に追い込まれてしまうことがあります。
M&Aは、焦って始めるものではなく、余裕のあるうちに選択肢を広げておくべきものなのです。

“まだ先”と思っている人にこそ、今準備してほしい理由

「今すぐ売る予定はないので、まだ準備は早い」
そう考える経営者の方は少なくありません。
しかし、M&Aの現場に長年携わってきた立場からお伝えすると、この考え方には注意が必要です。

理由はシンプルで、適切なM&Aを実現するための準備には、想像以上に時間がかかるからです。
実際に、1〜2年かけて準備された会社と、急ごしらえで売却に至った会社とでは、
買い手からの評価・選択肢の幅・交渉条件に大きな差が出るのが実情です。

最初にやるべき“3つのリアルな準備”

まだ先の話だと思っていても、今のうちから以下の準備を始めておくだけで、将来の選択肢は大きく広がります。

1. M&Aに関する最低限の知識をつける
・売却の流れ、相手探し、価格の考え方など、基本的な理解を持つ
・情報を持つことで、騙されたり、後悔したりするリスクが減る

2. 自社の現状(財務・法務・人材など)を整理しておく
・経営数字の見える化、契約書の整備、組織体制の棚卸しなど
・いざというとき、信頼される“売れる会社”の土台になる

3. 理想の引き継ぎ像(誰に/どう託したいか)を考えておく
・従業員を守りたい?成長を託したい?引退後も関わりたい?
・自分自身の価値観を整理しておくことが、最適な相手選びにつながる

 

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第3回は、M&Aの「全体の流れ」について。
何から始まり、誰が関わり、どのようなプロセスを経て、どう終わるのか
まずは全体像をつかむことから始めましょう。