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海外子会社を設立すると、日本の税務はどう変わるのか?― 国際課税・税務調査で必ず見られるポイント ―

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海外子会社を設立すると、日本の税務はどう変わるのか?― 国際課税・税務調査で必ず見られるポイント ―

海外進出を検討している企業経営者の多くが、
「日本法人の税務は今まで通りではないか」と考えています。

しかし実務では、
海外子会社を持った瞬間から国際課税の論点が始まります。

特に税務調査では、

・移転価格税制
・タックスヘイブン対策税制(CFC税制)
・外国子会社配当益金不算入
・過少資本税制、過大支払利子税制

などが必ず確認対象になります。

本記事では、
「海外子会社を設立すると何が変わるのか」
「税務調査官はどこを見るのか」
を実務視点で解説します。

 

👤 社長
海外に子会社を作る予定があります。
東南アジアで販売会社を設立しようと考えています。

正直、日本の税務は今まで通りですよね?
何が変わりますか?

🧑‍💼 税理士

正直に申し上げると、
税務の世界が一段階変わります。

国内だけで完結していたときと比べて、
「日本だけ見ていればよい」という状態ではなくなります。

海外子会社を持った瞬間から、
日本税務は“国際課税モード”に入ります。

適用可能性が出てくる制度

状況によっては、以下の制度が関係してきます。

✅ 外国子会社配当益金不算入
✅ タックスヘイブン対策税制(CFC税制)
✅ 移転価格税制
✅ 過少資本税制・過大支払利子税制
✅ 租税条約の適用判定

社長が意識していなくても、
税務当局側はこれらを前提に見ています。

税務調査官が見ている視点は実はシンプル

実は調査官の視点は複雑ではありません。

彼らが見ているのは基本的にこの2点だけです。

★ 日本の利益が海外へ不当に移転していないか
★ 海外で得た利益を日本で適切に申告しているか

この2軸で全てが整理されます。

👤 社長
なるほど…。
制度は難しそうですが、見ている視点はシンプルですね。

最重要論点:移転価格税制

🧑‍💼 税理士

特に重要なのが移転価格税制です。

例えばこんなケースです。

日本親会社(製造)

海外子会社(販売)へ低価格で販売

価格を少し下げるだけで、
日本の利益は簡単に減ります。

逆に、
海外子会社に高額なロイヤルティを請求すれば
海外側の利益を日本へ戻すことも可能です。

つまり、
「グループ内取引価格は自由に動かせる」という構造がある。

だから税務当局は問います。

👉 その価格は第三者間でも成立しますか?

文書化義務も厳格化

一定規模以上の法人には、

・ローカルファイル
・マスターファイル
・国別報告書(CbCR)

などの文書作成義務があります。

形式的な書類ではなく、
「なぜその利益配分になるのか」を説明できる論理が必要です。

👤 社長
価格は実態に合わせれば問題ないのでは?

🧑‍💼 税理士

実態の整理ができていれば問題ありません。

しかし実務では、

・誰がどの機能を担っているか曖昧
・リスクの所在が契約に書いていない
・価格算定根拠が残っていない

この状態が非常に多いです。

調査では
「実態」と「契約」と「価格」が一致しているかを見ます。

実は多い「寄附金認定」

👤 社長
赤字の子会社を支援する場合はどうですか?

🧑‍💼 税理士

非常に多い論点です。

例えば:

・無償で人員を派遣
・本来請求すべき管理費を請求しない
・低利融資
・債権放棄

これらは場合によっては
寄附金認定されます。

寄附金と認定されると、
損金算入限度額を超える部分は否認されます。

「グループだから」という理由は通用しません。

CFC税制(タックスヘイブン対策税制)

海外子会社が低税率国にある場合、
一定条件を満たすと、

海外で留保している利益を
日本で課税する制度です。

「まだ配当していないから日本では課税されない」
という考えは通用しません。

世界的に進む情報共有

現在は、

・金融口座情報(CRS)
・多国間情報交換
・各国税務当局間のデータ共有

が毎年行われています。

「海外だから分からない」は
完全に過去の話です。

👤 社長
つまり、海外子会社があると必ず見られる?

🧑‍💼 税理士

はい。

海外子会社がある企業は、
税務調査において国際取引部分を必ず確認されます。

これは例外ではなく、実務上の常識です。

BASE ONEの関与ポイント

重要なのは、
申告段階で慌てないことです。

国際税務は
「事後修正」が最もコストが高い分野です。

私たちが重視しているのは、

✔ 契約設計
✔ 機能・リスク分析
✔ 価格算定ロジックの事前整理
✔ 証憑整備
✔ 本社向け説明資料の作成

取引開始時点で設計すること。

これが最大のリスク回避です。

まとめ

海外子会社を持つことは、
ビジネス拡大のチャンスです。

しかし同時に、

「利益配分の合理性を説明できる体制」

が求められます。

国際課税は難しいのではなく、
“準備していないこと”がリスクなのです。