IPOだけが正解じゃない
──スタートアップに広がる“M&Aという出口”の選択肢
【経産省・スタートアップ投資契約ガイドライン増補版】
スタートアップの出口戦略が、いま静かに広がりを見せています。
経済産業省は2025年9月、「スタートアップ投資契約ガイドライン(増補版)」を公表しました。
これは2018年策定、2022年改訂に続くアップデートで、IPO(新規株式公開)の努力義務を課す日本固有の慣行を改め、M&Aによるイグジットも投資回収の選択肢に含めるように促す内容が含まれています。
実務の現場では、これまでもM&Aによる出口はすでに行われてきました。
しかし、制度面・契約面でその考え方が明文化されたことで、よりオープンに、柔軟に議論できる環境が整いつつあります。
スタートアップにとってM&Aは“新しい”ものではなく、成長のステージに応じた現実的な選択肢として定着しつつあるのです。
IPO一辺倒からの転換──M&Aも“合理的な出口”として明文化
従来の日本では、ベンチャーキャピタル(VC)がスタートアップに出資する際、
「IPO(新規株式公開)を目指して最大限努力する」という条項を契約に盛り込むのが一般的でした。
しかし、経済産業省が2025年9月に公表した「スタートアップ投資契約ガイドライン(増補版)」では
この条項を見直し、次のように整理しています。
Exit協力義務を定める場合でも、上場に限定するのではなく、M&A等の選択肢を含めるようにする。
つまり、IPOを唯一のゴールとするのではなく、
M&Aやセカンダリー取引なども合理的なExit手段として明記すべきという考え方が示されました。
海外投資家を呼び込むための「国際整合」 ──投資慣行のアップデートが進む
米国などの主要国では、スタートアップ投資の回収手段の多くがM&Aによって実現しています。
これに対し、日本では長らくIPO偏重の傾向が強く、こうした契約慣行が海外投資家にとって参入のハードルとなってきました。
経済産業省は、こうした状況を踏まえて2025年9月に「スタートアップ投資契約ガイドライン(増補版)」を公表。
海外投資家との契約実務にも対応できるよう、国際的な整合性の確保を図っています。
特に増補版では、次のような方向性が明確に示されました。
- 従来はIPOを前提として定められていた努力義務を、M&Aなども含めたExit協力義務として整理
- M&Aやセカンダリー取引(未上場株式の2次流通)を合理的な投資回収手段として位置づけ
- 投資家が出資額以上の返還を求める「過剰な返還請求条項」を設定しないことを推奨
これらの見直しは、起業家が失敗を恐れず再挑戦できる環境を整えるとともに、
リスクマネーの流動性を高め、海外からの投資を呼び込む基盤づくりにつながるものです。
ガイドライン自体に法的拘束力はありませんが、国が方向性を明示したことで、
今後の投資契約やExit設計における実務的な意識変化が期待されます。
💡 参考:経済産業省「スタートアップ投資契約ガイドライン(増補版)」(2025年9月公表)
スタートアップM&Aは「事業承継型」とは異なる論点が多い
スタートアップにおけるM&Aは、一般的な事業承継型M&Aとは異なり、次のような論点が複雑に絡みます。
- 投資契約や株主間契約の整理
- 知的財産・プロダクト価値の評価
- 事業の将来性と実績のギャップをどう埋めるか
- 資本政策やストックオプションの精査
- 複数回の資金調達を経て株主構成が複雑化している場合の、分配や権利調整のシミュレーション
業歴の長いオーナー企業の事業承継型M&Aとは異なり、
スタートアップM&Aでは「将来性はあるが実績が乏しい」というケースが多く、
買手と株式価値評価額(=売却価額)にギャップが生じやすいのが特徴です。
さらに、IPOを前提に複数回の資金調達を行っている場合など、
直近の資金調達ラウンドでの株価より、M&Aでの売却価額が下回ることも少なくありません。
いわゆる「ダウンラウンドM&A」のケースで、
特に優先株式を保有する優先株主が入っている場合には、
投資契約や株主間契約の内容に応じて、株主間での調整が必要になることもあります。
このように、スタートアップM&Aでは価格そのものの交渉だけでなく、
株主構成・契約条件・評価の前提をどう整理するかという、構造的な設計力が求められるのです。
BASE ONEの立場 — 税務顧問だからこそできる、M&Aの“適切なタイミング”の提案
BASE ONE税理士法人のM&A支援は、仲介業者やFAのように案件ありきで動くものではありません。
日々の税務・財務顧問として企業の状況を最も近くで見ているからこそ、
経営判断の延長線上でM&Aという選択肢を提案できる ──それが私たちのスタンスです。
スタートアップの成長フェーズでは、
資本政策・投資契約・財務構造・経営者の意向などが複雑に絡み合います。
BASE ONEは、これらを一体で整理し、
「いま動くべきか」「どのような出口を描くべきか」を客観的に助言します。
具体的には、次のようなご相談に対応しています。
- IPO以外の選択肢を現実的に検討したい
- 将来のM&Aを見据えて資本政策や投資契約を整理したい
- まだ十分な利益が出せていないが、関心をもってくれる相手先がいるのか
M&Aを“ディール”として扱うのではなく、経営戦略の一環として位置づける。
顧問税理士という日常的なパートナーだからこそ、経営者が納得できる判断を支援できます。
まずは情報整理から。M&Aの検討は“早い段階”がおすすめ
M&Aは「売却を決めてから」では遅い場合があります。
早期に出口設計を意識することで、選べる相手・条件・スキームの幅が広がります。
BASE ONEでは、スタートアップの財務・税務・M&A支援を一体的に行い、創業者の“次の挑戦”を支えます。
どの段階の相談でも構いません。まずは情報整理から始めてみませんか。
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