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【解説】堅実に成長してきた会社のためのTPM上場とM&A戦略

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 はじめに

かつては、上場といえばIPO(一般市場への上場)がほぼ唯一の選択肢でした。
成長を目指すならIPOを目標に据え、時間とコストをかけて準備を進める。そうした考え方は、今でも決して間違いではありません。

一方で、実際に経営の現場に立つ社長ほど、次のような違和感を覚える場面も増えてきています。

・この規模、この成長スピードで、本当にフルIPOが最適なのか
・上場準備や維持にかかる負担と、得られるリターンは見合っているのか
・自分自身の年齢や体力、これからの経営人生をどう設計するのか

こうした問いを考える中で、「TPM上場」という言葉が、ひとつの選択肢として浮かび上がってくる経営者が増えています。

本記事では、TPM上場を制度として解説するのではなく、
堅実に成長してきた会社が、TPM上場とM&A戦略をどのように位置づけるべきか
という視点で整理していきます。

なぜ今、「TPM上場」という言葉が経営者の選択肢に入ってきたのか

近年、経営者の方とお話しする中で、「TPM上場」という言葉が話題に上る機会が増えてきました。
以前であれば、上場といえばIPOがほぼ唯一の選択肢として語られていた印象がありますが、ここ数年で、その前提が少しずつ変わり始めているように感じます。

背景にあるのは、IPOを取り巻く環境の変化です。
上場準備に求められる管理体制や内部統制の水準は年々高まり、準備期間は長期化し、コスト負担も無視できないものになっています。

また、経営者ご自身の年齢や体力、これからの人生設計を踏まえたときに、「本当にフルIPOがベストな選択なのか」と立ち止まって考える社長が増えているのも自然な流れでしょう。

一方で、「成長を止めたいわけではない」「将来の選択肢は残しておきたい」という思いは、多くの経営者に共通しています。
こうした中で、IPO一本にこだわらず、より現実的な選択肢としてTPM上場を検討するという動きが、徐々に広がってきています。

なお、TPM(TOKYO PRO Market)の制度概要や上場要件については、
東京証券取引所が公式に整理している以下のページをご参照ください。

https://www.jpx.co.jp/equities/products/tpm/outline/index.html

本記事でお伝えしたいのは、「TPMとは何か」という制度論ではなく、
TPM上場が、経営者にとってどのような文脈で選択肢に入ってきているのかという点です。

TPM上場は「誰にでも向いている」わけではない

TPM上場が現実的な選択肢として語られるようになった一方で、注意すべき点もあります。
それは、TPM上場は決して「誰にでも向いている制度」ではないということです。

TPMであっても、上場準備や上場後の維持には、相応のコストと負担が発生します。
実務的には、数千万円規模の追加コストや、継続的なガバナンス・情報開示対応が求められます。

そのため
・「TPMなら楽に上場できる」
・「赤字でもなんとかなる」
といった期待で検討すると、後からギャップに悩むことになりかねません。

特に重要なのは、安定して利益を出せる体質かどうかです。
目安としては、年間3,000万円以上の利益を継続的に確保できる力があるかどうか。
これは、上場コストを吸収できるかというだけでなく、経営の安定性そのものを示す指標でもあります。

また、「IPOで一発逆転したい」という発想とも、TPM上場は相性が良いとは言えません。
TPMは、短期的な評価を跳ね上げる仕組みではなく、
これまでの経営を土台に、選択肢を広げていくための市場だからです。

|堅実に成長してきた会社だからこそ、TPM上場を活かせる

では、どのような会社がTPM上場を活かしやすいのでしょうか。

それは、派手さはなくとも、着実に利益と事業を積み上げてきた会社です。

・無理な売上拡大をしてこなかった
・数字や管理体制と向き合ってきた
・社長自身が中長期の視点で経営してきた

こうした会社にとって、TPM上場は「成長を加速させる魔法」ではありません。
むしろ、これまでの経営を整理し、外部から見える形にするための仕組みとして機能します。

重要なのは、「上場すること」そのものをゴールにしないことです。
TPM上場はあくまで手段であり、その先にある経営戦略や選択肢と結びついてこそ意味を持ちます。

M&A戦略から逆算すると見えてくる、TPM上場の意味

TPM上場の意味を考えるうえで、避けて通れないのがM&A戦略との関係です。
ここでいうM&Aとは、単に「会社を売る」という話ではありません。

・成長のために他社を買収する
・将来、事業や会社を誰かに託す
・経営の節目で、複数の選択肢を持つ

こうした判断も含めて、M&Aは経営の延長線上にある戦略的な選択肢です。
TPM上場を選択肢に含めることで、このM&Aを取り巻く環境そのものが、少しずつ変わってきます。

非上場のままM&Aを検討する場合、実務上はどうしても制約が生じやすくなります。
たとえば、売り手側が不安を感じやすかったり、金融機関がM&A資金の融資に慎重になったりする場面です。
これらは、事業内容や収益力の問題というよりも、会社としての信頼性や透明性をどう説明するかという点に起因することが少なくありません。

TPM上場によって得られる最も大きな効果は、まさにこの部分です。
上場会社として一定のルールに基づいた情報開示やガバナンスが求められることで、

・外部から見た会社の位置づけが明確になる
・数字や事業の説明に共通の前提が生まれる
・金融機関や取引先との対話がしやすくなる

といった変化が起こります。

もちろん、そのためには上場コストを負担し、内部管理体制を整え、情報開示を行う必要があります。
ただし、その負担はフルIPOと比べれば現実的な水準に抑えられており、
信頼性・透明性を得るための対価と捉えることもできます。

このような環境が整うことで、M&Aにおいても、

・買収条件の考え方に余地が生まれる
・交渉の進め方がスムーズになる
・結果として、選択肢の幅が広がる

といった効果が期待できます。
ここで重要なのは、特定の手法を使えるようになるかどうかではなく、
現金一択に縛られず、状況に応じた判断がしやすくなるという点です。

TPM上場とM&A戦略の関係を一言で表すなら、
「M&Aをやるための制度」ではなく、「M&Aを含む経営判断の自由度を高めるための環境整備」
と捉えるのが実務的でしょう。

だからこそ、TPM上場は、
M&Aありきで検討するものでも、IPOの代替として安易に選ぶものでもありません。
堅実に成長してきた会社が、将来の選択肢を広げるために、
あらかじめ整えておく“経営の土台”として意味を持つのです。

|IPO一本足打法を見直すという経営判断

ここで誤解してほしくないのは、IPOを否定しているわけではないという点です。
IPOは今でも有力な選択肢であり、目指す価値のあるゴールです。

ただし、IPOだけを唯一のゴールにしてしまうと、経営判断が硬直することがあります。

・環境変化に対応しにくい
・準備が長期化する
・社長自身の人生設計とズレが生じる

TPM上場を選択肢に含めることで、
「いつまでに何を決めなければならないか」という時間的な余白が生まれます。

どの道を選ぶかは、今決めなくても構いません。
選べる状態を先につくるという考え方が、経営判断を柔軟にします。

|TPM上場後に見えてくる、3つの経営の分岐点

TPM上場はゴールではなく、通過点です。
上場後には、大きく分けて次の3つの分岐点が見えてきます。

1つ目は、TPMを維持しながらM&Aを活用して成長を続ける道。
2つ目は、事業や体制が整った段階で、ステップアップIPOを目指す道。
3つ目は、戦略的なM&Aによって会社を託す、あるいは売却する道。

どれが正解かは、会社ごとに異なります。
大切なのは、あらかじめ道を固定しないことです。

TPM上場の価値は、「未来を決めること」ではなく、
「未来を選べる状態をつくること」にあります。

|まとめ:重要なのは「どこに上場するか」ではなく「どんな選択肢を持つか」

TPM上場も、M&Aも、IPOも、いずれも経営のための手段です。
大切なのは、それらを自社の状況に合った形で使えるかどうかにあります。

堅実に成長してきた会社ほど、
「次はどうするべきか」「この判断は正しいのか」と、立ち止まる場面が訪れます。
そのときに必要なのは、結論を急ぐことではなく、
選択肢と前提条件を一度、冷静に整理することです。

TPM上場が合っているのか。
そもそも今はM&Aを考えるタイミングなのか。
あるいは、もう少し足元を固めるべきフェーズなのか。

こうした問いに、最初から明確な答えがあるケースは多くありません。
だからこそ、「まだ何も決まっていない段階」から整理することに意味があります。

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BASE ONEでは、初回に限り、無料でご相談をお受けしています。
これは、M&Aや上場ありきで話を進めるためではなく、
まずは経営の状況や選択肢を整理する場として設けているものです。

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たとえば、次のようなご相談にも対応しています。

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