- コラム
日本進出企業が知るべき「IFRSと日本基準の違い」 ― 日本子会社の法人税申告はそのままできるのか?
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日本に子会社を設立する際、
多くの海外本社CFOが直面するのが「IFRSのまま税務申告できるのか」という論点です。
日本の法人税は、日本基準を出発点とする制度設計です。
この構造を理解せずに進めると、tax provisionや監査対応に影響が生じます。
そのポイントを、対話形式で整理します。
👤 海外本社CFO
日本に子会社を設立しました。
本社はIFRSで連結しています。
日本法人もIFRSベースで帳簿を作っていますが、そのまま税務申告できますよね?
🧑💼 日本側税理士(BASE ONE)
実は、そこが最初の重要論点です。
日本の法人税は「確定決算主義」を採用しています。
つまり、
日本基準(JGAAP)で作成された計算書類を出発点に、税務調整を行う
という構造です。
IFRSやUSGAAPのままでは、
日本の法人税計算は完結しません。
税務申告にあたっては、日本基準ベースへの調整が必要になります。
👤 CFO
IFRSは国際基準ですよね?
なぜそのまま使えないのですか?
🧑💼 税理士
理由は制度設計にあります。
日本の税法は、日本基準による決算書を前提に設計されています。
そのため、外資系企業では通常、
① IFRS/USGAAP
② 日本基準へ変換(GAAP差異調整)
③ 税務申告調整
という三段階構造になります。
GAAP差異調整の3つの実務パターン
👤 CFO
実務では、どのように対応するのですか?
🧑💼 税理士
主に3つの方法があります。
① システム内で二重基準管理
会計システムで複数GAAP管理を行う方法です。
・仕訳段階で差異管理
・GAAP別レポート出力
・自動リコンシリエーション
メリット
・内部統制が強い
・決算サイクルが安定
デメリット
・導入コストが高い
② Excelで差異調整(最も多い形)
・IFRS決算をクローズ
・差異一覧をExcelで管理
・JGAAP PL/BSを再構成
メリット
・柔軟性が高い
・初期コストが低い
デメリット
・属人化リスク
・税務との連動が弱い
③ 日本基準でクローズし、親会社用に逆調整
近年増えている形です。
・日本法人はJGAAPでクローズ
・連結用にIFRS調整
メリット
・税務との整合性が高い
・申告調整がシンプル
デメリット
・本社との調整負荷
👤 CFO
GAAP差異だけでも複雑ですね。
🧑💼 税理士
さらに重要なのが、tax provisionとの関係です。
決算時には法人税費用の見積計上が必要になります。
そのため、最低でも次の3層を理解しておく必要があります。
① IFRSの会計処理
例:
・リース会計
・収益認識
・のれん非償却
② JGAAPとの差異
・引当金認識
・減損テスト
・金融商品評価
③ 税務申告上の調整
・交際費限度超過
・減価償却超過
・寄附金損金不算入
👤 CFO
つまり、IFRS → JGAAP → 税務という三重構造ですね。
🧑💼 税理士
その通りです。
この構造を理解せずに進めると、
・tax provisionが本社想定とズレる
・連結数値と申告所得の差異が説明できない
・監査で調整プロセスを問われる
という問題が発生します。
なぜGAAP差異調整は「統制設計」なのか
👤 CFO
単なる会計差異の整理ではないのですね。
🧑💼 税理士
はい。
GAAP差異調整は、単なる技術論ではありません。
それは、コントロール設計の問題です。
GAAP差異を整理せずに運用すると:
・税務計算の出発点が毎期揺らぐ
・tax provisionの精度が低下する
・監査対応で説明負荷が増加する
・本社レポーティングとの整合性が崩れる
結果として、決算・監査サイクルが不安定になります。
まとめ
GAAP差異調整は単なる会計差異の整理ではありません。
それは、
・税務リスクの統制
・連結報告数値の整合性確保
・財務情報の説明可能性の担保
・監査対応力の維持
すべてに直結する「基盤設計」です。
日本進出時にこの設計を行うかどうかで、
その後の税務調整、tax provision、監査対応の負荷は大きく変わります。