はじめに
日本に子会社(株式会社や合同会社など)を設立する外資系企業が年々増えています。しかし、日本の税務手続きは複雑であり、適切な届出を行わないと、後々の税務調査やペナルティのリスクが生じる可能性があります。
本コラムでは、外資系企業が日本で子会社を設立する際に検討すべき税務届出書について、解説いたします。
法人設立時に提出が必要な主な税務届出書一覧(任意の届出も含む)
書類名 | 提出先 | 主な目的 | 提出期限 |
---|---|---|---|
法人設立届出書 | 所轄税務署 | 新設法人の税務登録 | 法人設立の日から2か月以内 |
青色申告の承認申請書 | 所轄税務署 | 節税効果のある青色申告の利用申請 | 事業開始日から3か月以内又は最初の事業年度終了の日(いずれか早い方) |
給与支払事務所等の開設届出書 | 所轄税務署 | 源泉徴収義務者としての登録 | 給与の支払を開始した日から1か月以内 |
源泉所得税の納期の特例の承認申請書 | 所轄税務署 | 毎月納付 → 半年ごとの納付に変更可能 | 特に定められていません(原則として、提出した日の翌月に支払う給与等から適用されます。)。 |
消費税課税事業者選択届出書 | 所轄税務署 | 消費税還付を受けるための課税選択 | 事業を開始した日の属する課税期間中 |
申告期限の延長の特例の申請書 | 所轄税務署・都道府県税事務所・市区町村 | 申告期限の延長 | 最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで |
棚卸資産の評価方法の届出書 | 所轄税務署 | 期末在庫の評価方法の選択 | 設立第1期の確定申告書の提出期限 |
減価償却資産の償却方法の届出書 | 所轄税務署 | 償却方法の選択 | 設立第1期の確定申告書の提出期限 |
外貨建資産等の期末換算方法等の届出書 | 所轄税務署 | 換算方法の選択 | 設立第1期の確定申告書の提出期限 |
事前確定届出給与に関する届出書 | 所轄税務署 | 事前確定届出給与として損金算入するため | 設立の日以後2月を経過する日 |
法人設立届出書(地方税) | 都道府県税事務所・市区町村 | 事業税・住民税の登録手続き | 設立の日以後2か月以内(都税においては15日以内、市町村においてはそれぞれの定める期間内) |
適格請求書発行事業者の登録申請 | 所轄税務署 | 「適格請求書」を発行できるようにするため。 | 事業を開始した日の属する課税期間中 |
各届出書のポイントを解説
- 法人設立届出書(国税・地方税)
法人設立後、税務署に法人の基本情報(設立日、所在地、代表者、事業内容等)を届け出るための届出書です。設立後、2以内に税務署および都道府県・市区町村に提出します。登記簿謄本(履歴事項全部証明書)や定款の写しなどが添付書類として必要です。
- 青色申告の承認申請書
提出することで、欠損金の繰越控除や各種特典が受けられる青色申告が可能になります。設立当初から適用を受けるには、期限内の提出が必要です。
- 給与支払事務所等の開設届出書
役員報酬や従業員への給与支払を開始する場合は、この届出が必要になります。これにより、法人は源泉徴収義務者となり、給与支払時に所得税を天引きして納付する義務が生じます。
- 源泉所得税の納期の特例の承認申請書
原則として源泉所得税は毎月10日までに納付する必要がありますが、申請により年2回の納付(7月・1月)にまとめることができます。給与の支給人員が常時10人未満と人数の制限はありますが、事務負担の軽減を図りたい企業におすすめです。
- 消費税課税事業者選択届出書
通常設立後2年間は「免税事業者」となり消費税の納税義務はございませんが、あえて課税事業者を選択することで、消費税還付が受けられる可能性があります。海外取引がある企業には重要な選択肢です。また、インボイス制度との関連も確認が必要となります。
- 申告期限の延長の特例の申請書
通常、申告書の提出期限は事業年度終了の日から2か月以内とされています。しかしながら、外資系企業の多くでは親会社の決算スケジュールとの兼ね合いにより2か月以内に決算を確定することが難しいと考えられます。そのため申告期限の延長申請をすることで申告期限を1月間延長することが出来ます。
- 棚卸資産、減価償却資産、外貨建資産等に関連する届出書
当該資産等の評価方法は複数の評価方法が認められております。外資系企業においては国際財務報告基準(IFRS)を採用している企業がありますが、その場合、会計上の評価方法と税務上の評価方法が異なった場合には、申告調整が必要になるケースが生じるためその管理コスト等を考慮すると届出書を提出し、税務と会計の評価方法を揃えた方が有効な場合がございます。
- 適格請求書発行事業者の登録申請
インボイス制度に対応した「適格請求書」を発行できるようにするための登録手続きになります。新設法人については、事業を開始した日の属する課税期間の初日から登録を受けようとする旨を記載した登録申請書を、事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出した場合において税務署長により適格請求書発行事業者登録簿への登載が行われたときは、その課税期間の初日に登録を受けたものとみなされます。
したがって、免税事業者である新設法人が設立時から、適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、設立後、その課税期間の末日までに、課税事業者選択届出書と登録申請書を併せて提出することが必要です。
※免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者の登録を受ける場合、経過措置により、課税選択届出書の提出を要せず、課税事業者となることができます。
まとめ
外資系企業の日本子会社であっても、日本国内に本店などの拠点を有する法人である以上、法律上は「内国法人」として取り扱われます。そのため、原則として設立時に税務署へ提出すべき届出書類の種類や内容は、日本国内の法人と違いはありません。
しかし、届出書の提出を失念すると、青色申告の適用が受けられなかったり、源泉税や消費税の手続きに不備が生じるなど、後々の税務実務に大きな支障が出る可能性があります。
そのため、法人設立時点でどの届出書を、どの期限で、どの機関に提出すべきかを正確に把握・準備することが重要です。
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